TVR TuscanのエンジンECUはRS232Cでパソコンと接続し、専用のソフト(TVR ECU DIAGNOSTIC)を使うことで様々なエンジンの情報を得たり、燃料の補正マップのリセットやスロットルポジションのリセットをすることが出来ます。
このページは専用ソフト「TVR ECU DIAGNOSTIC」の説明です。ソフトには4つの画面があり、Page UpキーとPage Downキーで切り替えることが出来ます。次にそれぞれの画面の説明をします。
この画面では、エンジンに入力される主な信号と、エンジンへのECUの主な出力を表示します。
エンジン回転数をRPMで表示します。実際のエンジン回転数と一致していないような値や、あり得ない値の場合はセンサの故障かセンサ線の異常が考えられます。この場合は、クランク角センサを確認(機械的な損傷や、金属の堆積物が付いていないか、端子が腐食したり水が入っていないか、極性は正しいか)します。
スロットルポジション(スロポジ)センサは6連スロットルの前側(1,2,3気筒)用がセンサ1、後側(4,5,6気筒)用がセンサ2です。6気筒エンジンを前後の3気筒の2つのバンクに分けて制御しています。
センサの値は全閉で約15%、全開で約94%。センサの読み値はノイズなどの影響でセンサ1と2で数%異なるが、センサ1と2で3%以上の差は出てはいけません。
一方のセンサが故障した場合は、残った方のセンサの値を使って制御します。そのときは、センサ1と2の値は完全に同じ値を示します。
スロポジセンサは調整不可なので、センサを交換したり、スロットルリンクを調整したらセンサをリセットしてください。リセットはECU TOOLSのメニューのreset throttleを選択します。リセットはスロットルがアイドリング位置になっているときにしか行ってはいけません。アイドリング位置をECUが検出し、センサの読み値の最小値が約15%になるように再調整されます。
吸気温度センサはエアクリーナーとスロットルの間にあるセンサで検出します。
ECUがセンサの故障を検知すると、値は摂氏10度で代替されます。
水温はシリンダーヘッドのセンサで測定されます。
ECUがセンサの故障を検知すると、値は摂氏95度で代替されます。エンジン冷却ファンはこの値で制御されていて、92度でオンになり、88度でオフになるため、センサ故障中は常にオンになります。
バッテリ電圧が表示されます。通常12Vから13.8Vの間の値で、デフォルトの値はありません。
気圧はエアクリケースの左側から測定され、ミリバール単位で表示されます。計測される気圧は大気圧と一致します。
ECUがセンサの故障を検知すると、値は1000ミリバールで代替されます。圧力センサは過熱から守るために車内に設置されています。間違った値が表示されている場合は、センサとエアクリケースを接続するホースのつまりや漏れを確認します。
ラムダ1は前3気筒分(1,2,3)、ラムダ2は後3気筒分(4,5,6)の値を示しています。
エンジン始動後、センサが正しい値を表示するまでにウオームアップで少なくとも30秒かかります。ウオームアップすると、信号は約0Vと1〜1.5Vの間で切り替わります。0Vは燃調がリーン(理論空燃比より燃料が薄い)で、1Vはリッチ(理論空燃比より燃料が濃い)を示しています。切り替わる速さはエンジン回転数で変わります。リッチとリーンの割合はエンジン負荷によって変化します。
常に0Vを示している場合は、センサが正しく接続されていること、センサのヒータ線が6Ωであることを確認する(赤線(12V)と白線(ground))。赤線の12Vは燃料ポンプが作動しているときだけ供給されます。センサの黒色線は信号線です。
油圧はエアクリーナボックスの下辺りに設置されている油圧センサで検出されます。油圧センサからの出力は、油圧警告灯の表示に使われます。低回転での低油圧と高回転での高油圧を警告します。
センサ線の未接続や断線の場合は約130psiを示し、警告灯は常時消灯します。センサ線の地絡の場合は約150psiを示し、警告灯は常時消灯します。
各バンクの燃料噴射時間を表示します。水温80℃以上でアイドリング中は2.2-2.4msの間です。これより大きければ、
不完全燃焼のシリンダを特定するために、エキゾーストパイプ(排気管)の温度を確認します(エキパイのエキゾーストポートから1インチ程度の所をクレヨンで触る方法が使えます)。また、シンクロメータでシリンダの吸気流量を確認して、不完全な同調を検出します。
全ての気筒が正常なら、前述の空燃比センサを確認し、故障なら交換します。
それでも正常にならない場合は、疑わしいインジェクターにインジェクターサーキットテスターを接続し、エンジンを始動して数秒だけ回します。インジェクター回路が正常なら、エンジンが回転している間テスターが点滅します。インジェクターを外した状態で長い時間エンジンを回してはいけません。触媒に重大なダメージを及ぼす可能性があります。
これらの値は、正常な燃調を実現するためにECUが調整した燃料噴射量の割合を示しています。エンジン回転数と負荷の組み合わせごとに適応される値で、エンジン回転数と負荷それぞれ独立して変化します。
エンジンが正常であれば、この補正割合は少ないはずです。もし補正値が+-20%以上行ったら6連スロットルの異常か調整不良が考えられます。典型的な問題点は以下のとおりです。
この異常状態の時に車を走らせた場合、補正マップをゼロにリセットしなくてはなりません。リセットは、ECU TOOLSメニューから"ZERO ADAPTIVE MAPS"を選ぶことで実行できます。ECUを取り外すだけでは、941シリーズのECUはメモリーを消しません。
点火タイミングはTDC前の度で表示される。アイドリングで水温80℃以上のときは、12-17°の間であるべきです。違う場合は、全てのセンサ入力値を確認し、アイドリングが950rpmであることを確認します。
ECUが燃料ポンプを作動させていることを示します。燃料ポンプのリレーをONにすることで燃料ポンプを動かします。もし、燃料ポンプがECUでONにされているのにも関わらず、燃料ポンプが作動しない場合は、慣性スイッチ(過大な衝撃が車にかかったときに燃料供給を停止するためのスイッチ)が作動していないか確認します。慣性スイッチはトランク内にある燃料タンクの上部にあります。それでも動かないときは、運転席前方下部にあるヒューズボックスにある燃料リレーと燃料ポンプ用ヒューズを確認します。
ECUがラジエータ冷却ファンを作動させていることを示します。水温が摂氏92度以上になると、ファン1が作動し、94度以上になるとファン2が作動します。水温センサ故障の場合はファンが作動します。
ECUがファンを作動させているのにファンが回らない場合は、ファンリレーとヒューズを確認します。
この画面は、ECUが検出しているセンサ入力信号の故障を表示します。現在の故障が上部に表示され、記録された故障が下に表示されます。記録された故障とは、過去に検出されたが現在は検出されていない故障のことです。注意:故障はエンジンキーがON状態なら、センサ線が外れているだけでも記録されます。現在の故障が発生すると故障ランプ(MIL)を点灯します。記録された故障の時は故障ランプは点灯しません。
記録された故障を見ることは、間欠的な故障を追うときに役立ちます。記録されている故障はECU Toolsメニューを使って消すことが出来ます。
信号がオーバーレンジすると記録されます。スロットル1はバンク1(1,2,3番気筒)、スロットル2はバンク2(4,5,6番気筒)です。片方のバンクに故障が発生するとその入力信号は無視され、両バンクが正常なもう一つのスロットル信号を使って制御されます。このときMILランプが点灯します。
スロットルセンサ異常には、次の様な原因が考えられます。
スロットルの可変抵抗を交換するときは、水の侵入を防止するためにシリコンシーラントを塗布してスロットルボディに密封してください。
信号がオーバーレンジすると記録されます。故障時は水温が摂氏95度に設定され、冷却ファンをオーバーヒートを防ぐために作動させます。MILランプが点灯します。
水温センサ異常は、次の様な原因が考えられます。
信号がオーバーレンジすると記録されます。故障時は吸気温が摂氏10度に設定され、MILランプが点灯します。
吸気温センサ異常は、次の様な原因が考えられます。
信号がオーバーレンジすると記録されます。その場合は1000mBarで固定され、MILランプが点灯します。
大気圧センサ異常は、次の様な原因が考えられます。
1500rpm以上で11V以下か17V以上になると記録されます。
バッテリ異常は、次の様な原因が考えられます。
1.7V以上の信号が検出されると記録され、MILランプが点灯します。リアルタイムログ画面(下)は、ラムダセンサの作動を確認するのに適しています。センサー信号は0Vと1-1.5Vの間を行き来していて、0.4-0.7Vで固着することはありません。Lambda 1は前側の1,2,3番気筒のバンク1、Lambda 2は後側の4,5,6番気筒のバンク2です。
ラムダセンサ異常は、次の様な原因が考えられます。
バンク1(1,2,3番気筒)かバンク2(4,5,6番気筒)の補正値がリミットに達すると記録されます。たとえば、空燃比を調整するために過剰な量を適用している場合です。発生するとMILランプが点灯します。
A/Fフィードバック故障は、次の様な原因が考えられます。
この故障が出ている場合は、クランク角センサの配線が正しく接続されていません。極性を確認し、配線を接続し直します(黒線はセンサのピン1とECUの27を接続、白線でセンサのピン2とECUの12を接続)。
センサ信号が微弱となると記録されますが、MILランプは点灯しません。センサ信号が検出されると故障の深刻度合いに応じて点滅します。
クランクセンサ異常は、次の様な原因が考えられます。
この画面では、スロットル 1の値を上部に、スロットル 2の値を下部に大きく表示します。これによって、遠くからでも値を確認することが出来ます(6連スロットルの調整時に便利です)。
エンジン回転数が900-950rpmでアイドリングしているときに、センサ値は約15%を示すようにします。そうでないときは、ECU Toolsメニューからリセットします。エンジン側で調整はしないようにします。
スロットルセンサは大変敏感なので、電気的ノイズで+-2%の影響を受けますが、これは正常です。ノイズはスロットルの軸受けの磨耗によって、エンジン振動により軸受けが振動することでも発生します。このノイズが大きすぎると、ECUは加速時増量を行いはじめることがあります。加速時増量が発生する場合(AFR画面のdTHROTTLEを見るとわかります)、ハイテンションコードの状態を確認し、プラグが正しく取り付けられていて、ハイテンションコードがメインエンジンハーネスに共締めされていないことを確認します。
この故障は古くて走行距離の多い車で起こりやすく、A/F制御が上手く行かなくなると排ガス異常を起こします。
この異常が発生したら、スロットルセンサを交換し、スロットル軸の磨耗を確認してください。
空燃比フィードバックシステムの働きの詳細を示す画面です。システムが正常作動していることを確かめるために見ます。
システムが正常に動作するには、科学的に正常な燃焼による排ガスが触媒に供給されなくてはなりません。これは空燃比が14.7:1に保たれなくてはならないことを意味します。燃焼が濃いか薄いかを判断する排ガス中に入れたラムダセンサによってなされています。
燃料が濃い場合はラムダセンサは1-1.5Vを示し、薄いときはほぼ0Vを示します。燃料が濃いときは燃料を減らし、薄いときは燃料噴射量を増やすのです。この調整は補正値として記憶されています。すぺてのエンジン回転数と負荷に応じた多くの補正値が作られることになります。これにより、ECUはエンジンの生涯を通して最適な性能を維持するように再調整しています。
空燃比制御が作動する前に、空燃比センサをウオームアップします。これは、ウオームアップタイマーボックスに表示されています。ウオームアップは約30秒で終了します。
理論空燃比を保つためにはエンジンの温度が十分高い必要もあります。これは水温で判断します。
加速時には濃い空燃比が必要となり、これはスロットル開度の変化(dTHROTTLE)の検出によって行います。dTHROTTLEがONのときは空燃比フィードバックは行われません。
エンジン回転数が素早く変化しているときもフィードバック制御がうまくいかないので、そのようなときは制御を行いません。これは、dSPEEDに表示されます。
正常にエンジンが回転しているときは空燃比センサの電圧は0Vと1〜1.5Vの間で切り替わります。負荷が小さいときはリーン側(0V)を示していて、瞬間的にリッチ(1V)な状態を示します。負荷が増加するに従ってリッチとリーンほぼ同じ割合になってきます。
スロットル開度が69%を超えると、性能が最大化されるようにフィードバック制御は中止されます。これは、LAMBDA CONTROLボックスに表示されます。